煙の向こうに揺れる波の絵。枝や根を思わせる仮面をまとったコーラスの声。
森山未來とダニエル・プロイエットの身体とささやきが、静かに空間を震わせる。
『STILL LIFE』は、人間と自然の関係を見つめ直すダンス作品。
振付・演出は、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団やパリ・オペラ座バレエ団にも作品を提供してきたノルウェーの振付家 アラン=ルシアン・オイエン。
2024年神戸での滞在制作を経て世界初演され、ヴェネツィア・ビエンナーレなど欧州各地で高い評価を得た本作がいま、創作の地・日本で上演。
上演時間:約70分(終演後、アフタートーク実施予定)
出演:森山未來/ダニエル・プロイエット/青葉会スペリオル&男声合唱団
演出・振付・テキスト:アラン=ルシアン・オイエン
美術・衣裳:アイーダ・ヴァイニエリ/アラン=ルシアン・オイエン
音楽:ヘンリク・スクラム 音響:マティアス・グロンスダル 照明:マーティン・フラック
●森山未來
©Takeshi Miyamoto
1984年、兵庫県生まれ。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。俳優として、これまでに日本の映画賞を多数受賞。ダンサーとして、第10回日本ダンスフォーラム賞受賞。東京2020オリンピック開会式ではオープニングソロパフォーマンスを担当。2022年4月より神戸市にArtist in Residence KOBE(AiRK)を設立し、運営に携わる。ポスト舞踏派。
2024年のある日。美しい友人であり、素晴らしい振付家・演出家であるアランは今作「STILL LIFE」の企画書冒頭に、ランドアーティスト、アンディ・ゴールズウォージーの文章を引用した。
「私たちは往々にして、自分たちが自然の一部であることを忘れてしまう。
自然は私たちと切り離された存在ではない。
だから、自然とのつながりを失ったと言うとき、それは自分自身とのつながりを失ったということなのだ。」
西洋と東洋の「自然」の概念は違うと言われている。明確にはnature=自然では、実はない。しかし他者との、自然との、そして自分自身との断絶は、同時代に生きる全ての人たちとって危急の事態なのではないだろうか。
森山未來
●ダニエル・プロイエット Daniel Proietto

アルゼンチン生まれ。テアトロ・コロン附属学校でクラシックバレエを学び、チリ国立バレエ団などで活動。Carte Blancheの主要ダンサーを経て、ノルウェー国立バレエ団ゲスト・アーティスト。英国批評家協会賞最優秀男性ダンサー賞受賞。winter guests主要メンバー。
●アラン=ルシアン・オイエン(演出・振付) Alan Lucien Øyen

ノルウェーを代表する振付家・劇作家・演出家。ダンスと演劇を融合させた作品で国際的に評価される。2006年にカンパニー winter guestsを設立。ノルウェー国立バレエ団ハウス・コレオグラファー。ヴッパタール舞踊団、パリ・オペラ座バレエ団などに作品を提供。
自然と私たちの、静かな再会。
私たちはしばしば、自分たちが自然そのものであることを忘れてしまいます。自然は私たちの外側にあるものではありません。それなのに、テクノロジーと過剰な情報のなかで、私たちは自然とのつながりだけでなく、自分自身とのつながりさえ失いつつあるのではないでしょうか。
『STILL LIFE』は、私たちと自然との断絶についての作品です。タイトルはフランス語で“Nature Morte(死せる自然)”を意味します。自然が凍りついた静物のように存在し、私たちは生きていながらどこか麻痺している——その感覚を、ダンス、舞踏、そしてコンテンポラリー・シアターを通して探求します。
本作は、森山未來とダニエル・プロイエットのための新作です。二人はいずれもコンテンポラリー・ダンスの枠を大きく越え、新たな身体表現を求め続けてきた卓越したパフォーマーです。歌舞伎、舞踏、コンテンポラリー・シアター、映画、テレビ——多様な領域で培われた経験が、この作品の出発点となっています。この二人による振付的な出会いの場を創ることは、私にとって長年の夢でした。
私は誠実さをもって創作したいと考えています。シンプルな演劇的手法を用いながら、自らを偽らない舞台を創りたい。舞台には海や森の背景画が吊られ、装飾のないアナログな空間が広がります。そこに立つのは二人の身体、そして人間の声。ささやき、ハミング、呼吸、視線、触れること——人間の最も根源的な表現によって、私たちの「詩的な自己」と再び出会うことを試みます。
『STILL LIFE』で私は、内なる自然と外なる自然の双方に向き合いたいと考えています。自分自身との関係を見つめ直すことが、やがて他者や、この世界との関係をつなぎ直すことにつながる——その可能性を、この作品の中で探りたいのです。
アラン=ルシアン・オイエン
●青葉会スペリオル&男声合唱団

青葉会スペリオルは、1988年静岡児童合唱団の卒団生により結成。メンバーは幼少期より静岡児童合唱団に入団し、高校3年までの在籍中、ヨーロッパ演奏旅行を始め、数多くの公演に出演。レパートリーは中世から現代曲まで幅広い。青葉会男声合唱団は、2013年音楽青葉会・静岡児童合唱団創立70周年を記念し発足。ヘンデル《メサイア》、J.S.バッハ《ロ短調ミサ》、モンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》、J.S.バッハ《マタイ受難曲》(小林道夫指揮、静岡音楽館AOI主催)、モーツァルト《レクイエム》」(野平一郎指揮)、モンテヴェルディ《オルフェオ》(SPAC-静岡県舞台芸術センター共催、宮城聰芸術総監督による演出)に出演。2016年京都アルティ声楽アンサンブルフェスティバルにて招待演奏、2022年グランシップ主催事業NHK交響楽団×野平一郎プロジェクト フルオーケストラによる完結編において、野平一郎作曲《静岡トリロジーIII「瞬間と永遠の歌」》(野平一郎指揮)世界初演に静岡児童合唱団と共に出演し好評を博す。今回、SPAC俳優の吉植荘一郎氏を男声合唱団にお迎えする。