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「グランシップ リサイタル・シリーズ 鈴木愛美ピアノ・リサイタル」ピアニスト 鈴木愛美さん スペシャルインタビュー

8/23(土)「グランシップ リサイタル・シリーズ 鈴木愛美ピアノ・リサイタル」 鈴木愛美さん スペシャルインタビュー

「シューベルトに出会っていなければ、全く違う人生だった。」

鈴木 愛美



世界から注目を集める浜松国際ピアノコンクールで、日本人初の第1位に輝いたピアニスト・鈴木愛美さん。同コンテストでは、室内楽賞、聴衆賞も受賞し、今年1月にはロンドンデビューも果たしました。8月23日のグランシップでのリサイタルを前に、飛躍の扉を開いた浜松への思いをはじめ、自身の音楽観や公演の聴きどころを語ってくれました。

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雪化粧の富士山が映える、早春の清水マリナート。リハーサルの合間を縫って、ロビーに姿を見せた鈴木さん。昼食に食べたという絶品マグロの話から、静岡の話題へ。2024年の浜松国際ピアノコンクール(以下浜コン)以来、ファンが広がる静岡をどのように感じているのでしょう。

―鈴木さんにとって静岡県は、どのような場所ですか。

静岡市は今回が初めてですが、浜松市には何度も訪れています。浜松国際ピアノアカデミーや浜コンが終わってからもリサイタルなど…。私にとっては第二の地元のような場所です。

―嬉しいです!浜コンでは、コンクール向きの華やかな曲ではなく、ハイドンのソナタなどの落ち着いた曲を選ばれました。どのような思いで選曲されたのですか。

選曲はとても悩みました。少し地味になってしまうかなと思いましたが、自分が本当に弾きたい、心から共感できる曲を選びました。

―浜コン後、ご自身を取り巻く環境や演奏活動はどのように変わりましたか。

コンサートが格段に増えたと思います。基本的には日本ツアーを組んでいただいていますが、今年1月にロンドンでデビューして、昨年夏にはポーランドでも演奏しました。周囲の環境はすごく変わりましたが、私自身が大きく変わったということはないですね。



 ―4歳からピアノを始められて、小中高校の節目でやめる人も多い中、続けてこられました。「やめたい」と思ったことはなかったですか。続けてこられた理由は何だと思いますか。

もちろん「好き」というのが大前提です。弾いても弾いても思い通りにいかないことはありますし、「やめたい」と思ったこともあります。でもそれは一生付きまとうものだと思っていて。それでもやっぱり「やめる」という選択肢はなかったんですよね。

―とはいえ、練習曲集の「ハノン」や「ツェルニー」は、嫌だったりしませんでしたか(笑)。

「ハノン」は嫌でしたけど(笑)、「ツェルニー」はすごく好きでした。純粋にいい曲だなと思って。昔から先生に、「ただの練習曲じゃなくて、音楽として弾かないといけない」と言われていたので楽しく弾いていました。小学生の頃は、一回のレッスンに10曲くらい仕上げていったこともあります。

―弾くのが楽しくて、止まらない感じですね。以前、「部屋にこもってずっと弾き続けたい」と話されていた記事も拝見しましたが、鈴木さんにとって、ピアノに向き合う時間とは?

家でもホールでも、基本的に一人で弾く時間がすごく好きですね。自分がどう感じているか、どう弾きたいかを考える時間でもあります。本当に思っていることじゃないと、人には伝わらないと思うんです。先生にもたくさん教えていただきますが、言われた通りに弾くというより「その可能性もある」と思いながら、ピンとくるものを試しています。一つのフレーズを何度も弾いて、「これだ」という音色が出るまで探す時間も好き。言葉にするのは難しいのですが、音楽の中で本音を話せている瞬間。それが、一人で弾いている時間にある気がします。



―作曲家の中でも特にシューベルトに強い思いがあるそうですね。
 シューベルトは特に好きな作曲家です。時代も人生も自分とは全く違いますが、彼の持つ孤独感のようなものにすごく共感しています。彼に出会っていなければ、全く違う人生だったと思います。
シューベルトの音楽は、短調の孤独や寂しさの中からふっと長調の温かな旋律が現れる。その瞬間が本当に美しくて。願いとか、幻とか、実際は満たされていないものが、そこにある気がする。それがまた美しいんです。私自身、ずっとその音楽に助けられてきました。

―9月からロンドンに留学されるそうですね。ロンドンを選ばれた理由と、ギルドホール音楽演劇学校で学びたいことを教えてください。

ロンドンは世界の中心。さまざまな文化や芸術が集まる場所だと思います。多様な人が住んでいて、その関わりの中で新しい発見や刺激を受けたいと思いました。

ギルドホール音楽演劇学校を選んだのは、ロナン・オホラ先生に習いたいと思ったからです。とても知的な方で、以前レッスンをしていただいたとき、フォルテの音を「新宿のネオンではなく、軽井沢の温かい光のように」と言われたことが印象に残っています。表現だけでなく、楽譜の読み方やアーティキュレーション、時代背景も学びたいと思っています。

―これから、どんなピアニストになりたいですか。

やはり、国や人種、時代や文化といった違いを超えて、人間の真理に触れられる―そうした作品こそが、何百年にもわたって残り、今も多くの人に愛され続けているのだと思います。私も、そのような作品を通して、あらゆる境目を超えられるような演奏をしたいです。



―8月23日のリサイタルで演奏するプログラムについて、選曲の意図を聞かせてください。

 ベートーヴェンとシューベルトのソナタを弾きたいと思い、このプログラムにしました。

―なぜ、ベートーヴェンのソナタなのですか。

ピアニストにとってソナタは必ず勉強すべき作品で、ベートーヴェンのソナタは大きな目標であり、乗り越えるべき「壁」だと思っています。今回は前期の作品に取り組みたくて第4番と5番を選びました。前期の作品は生命力にあふれていて、特に4番は完成度も高く、リサイタルに慣れていない方にも聴きやすいと思います。

―後半はシューベルト。選曲の理由を教えてください。

ソナタ第16番はずっと弾きたいと思っていた曲です。ここ数年、ソナタでは第18番を弾く機会が多かったので、次に取り組む曲として選びました。
シューベルトの音楽には、人には言えない思いを語る瞬間が多く、心の叫びのようなものを感じます。音量として叫ぶのではなく、内側に深く潜っていくような音楽です。

―最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

今回のプログラムは、他のリサイタルではあまり演奏していない曲が多いので、ぜひ聴いていただきたいです。ピアノを習っている子どもたちや保護者の方にも楽しんでいただけたら嬉しいです。留学する前に、静岡でお会いできるのを楽しみにしています。

言葉をじっくり選び、話し終えると「うふふ」と笑う。そんなシャイで可愛らしい一面も印象的でした。
コンクールでの最高位獲得に加え、観客が選ぶ聴衆賞も受賞した鈴木さん。聴く人の心を掴む魔法のような音色をグランシップで感じてください。

 

 鈴木 愛美(ピアニスト)
2002年大阪府生まれ。大阪府立夕陽丘高等学校音楽科を経て、東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)を首席で卒業。同大学大学院修士課程に特別特待奨学生として学ぶ。2023年第47回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリおよび聴衆賞。第92回日本音楽コンクールピアノ 部門第1位および岩谷賞(聴衆賞)。2024年第12回浜松国際ピアノコンクール第1位および室内楽賞、聴衆賞。2026年1月ロンドンデビュー。
 
グランシップ リサイタル・シリーズ 鈴木愛美 ピアノ・リサイタル
8/23(日)14:00~
グランシップ 中ホール・大地
一般3,500円 こども・学生1,000円

【曲目】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調Op.10-1
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調Op.7
シューベルト:アレグレット ハ短調D915
シューベルト:ピアノ・ソナタ第16番 イ短調D845 Op.42

 

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