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「村田陽一ビッグバンド」出演  トロンボーン奏者・作編曲家 村田陽一さん スペシャルインタビュー

2025年11月15日(土)「村田陽一ビッグバンド」に出演する、トロンボーン奏者・作編曲家 村田陽一さんのスペシャルインタビュー

「自分でつくった音楽を、自分の音で届けたい。」
村田 陽一



ジャズ界の至宝・渡辺貞夫さんや、独創的な音楽性で常に注目を集める椎名林檎さんなど、名だたるアーティストと共に音楽を作り出し、ジャンルを越えて活躍するトロンボーン奏者・作編曲家の村田陽一さん。日本の音楽界に欠かせない存在ですが、実は静岡生まれの静岡育ち。そんな村田さんが、11月にグランシップで凱旋公演を行います。音楽に誠実に向き合い続けてきた歩みと、舞台裏のエピソードを語ってくれました。

最近は静岡に帰る機会も増えたという村田さん。静岡市内でのコンサートに中学校の同級生が駆けつけてくれたと話すその表情は、まるで少年のようでした。そんな村田さんが音楽と出合った、静岡での学生時代のお話から。

―トロンボーンを始めたきっかけを教えてください。学生時代の静岡での思い出もあればぜひ。

中学2年生の時に吹奏楽部の友だちに誘われて、何となく入ったのがきっかけです。音楽に興味があったわけでもなく、トロンボーンを選んだのも偶然。同級生にトロンボーンの上手な子がいて、悔しくてものすごく練習しました。3年生の後半にはもう「プロになろう」と思っていて、そういう根拠のない自信だけはありましたね(笑)。

―クラシックを学んでいた村田さんが、なぜジャズに転向されたのですか?

SBSラジオの「インビテーション・トゥ・ジャズ」という番組を高校3年生の時に聴いていて。ある日、ジャズ・トロンボーン奏者の向井滋春さんが生放送の公開録音に来ると知りました。ジャズのトロンボーンを聴いたことがなかったので聴きに行ったんです。その時に、いろいろなお話を聞いてジャズに転向しようと思いました。

 ―それから40年以上経ちますが、改めてトロンボーンの魅力とはどんなところだと思いますか?

スライドですね。音と音の間に切れ目がないというか、音がすーっとつながっていく感じ。それが一番の魅力。歌に最も近い表現ができる楽器だと思いますね。



 ―自らが率いるビッグバンドや作編曲、サポート、プロデュースなど幅広く活躍されていますが、ご自身のプロジェクトではどのような活動をされていますか?

機材を使ってたった一人で演奏するソロパフォーマンスも全国で行っています。そういう規模感でも自分の音楽を届けています。

―演奏活動を続ける中で、印象に残っている体験はありますか?

大学4年生の時に入っていたJAGATARAというバンドは、メンバーの多くが専門的に音楽を学んできたわけではありませんでした。ある日、メンバーの一人がうまく弾けなくて、全員で30分も同じフレーズを練習したんですよ。その時に感じたのは、技術的に巧いかどうかということだけではなく、利害を超えて、みんなで音を作っていくというスタンス。許し合える空気もあって温かいバンドでした。価値観が変わったというより、価値観の範囲が広がった経験でした。このことがその後の仕事にもつながっている気がします。

―渡辺貞夫さんや椎名林檎さんとは長くお仕事を続けていらっしゃいますね。

貞夫さんとは、僕が30歳の時に「ビッグバンドを作りたいからオーガナイズしてほしい」と言われて以来、ご一緒しています。実は、僕、編曲がすごく早いんです。普通ならオーケストラのスコアを書くのに2週間ほどかかるところを、僕は1日で書ける。ビッグバンドのスコアも1日あれば十分なので、打ち合わせの3日後に見せたら、貞夫さんに「早すぎる、ちゃんと書いてないだろ」って言われて。もちろん、きちんと書いていましたが、感覚的に思いついたままを音符にしていたんですね。そこからは、そのチョイスが本当に良いものかを検証するため、違うパターンを3つくらい作るようになりました。その中からひとつを選ぶ時の裏付けとして「なぜこの音をここに置いたのか」を説明できるようにしています。

椎名さんとは、デビュー直後からスタジオミュージシャンとして演奏で関わっており、2014年から編曲も担当させていただいています。彼女とは音楽の好みがドンピシャなので、自分を変えて書くことがまったくない。要望があれば「ここをこうしてほしい」と的確に返してくれるので、ものづくりをする上でとてもキャッチボールがしやすい相手です。

 

―現在はアレンジの仕事などでも広く知られていますが、ご自身ではどうお考えですか?

世間的には編曲家という印象が強いかもしれませんが、自分の軸足はあくまでも「トロンボーン奏者」です。自分でつくった音楽を、自分の音で届けたいという気持ちが根幹にあって、それはずっと変わっていません。もちろん、誰かのために音を作る仕事もありがたいですし、やりがいもありますが、それと自分のやりたいこととはきちんと棲み分けていて、自分のプロジェクトでは、自分の音楽を徹底的にやるようにしています。

 ―11月15日、グランシップで「村田陽一ビッグバンド」として演奏されます。どのような構成を予定されていますか?

前半はジャズのスタンダード、後半はファンクやPOPな曲を予定しています。ジャズ初心者からファンの方まで楽しめる、最大限の編成で静岡に伺います。
演奏だけでなく、楽曲の解説もしますよ。例えば、貞夫さんに提供した「メンジャニ」も演奏予定で、その背景やエピソードもお話しできればと思っています。

 ―ビッグバンドならではの魅力とは?
一体感、ですね。ドラムが叩くタイミングに合わせて、十数人のホーンが一斉に音を出す。あの小気味よさはビッグバンドならでは。それと、アンサンブルの音色の美しさを味わってほしいですね。

―故郷・静岡でのコンサートに、どのような思いがありますか?

やっぱり特別ですね。中学校の吹奏楽部から始まって、好きなことを追求してきた結果、今の自分がある。静岡でのステージは、ある意味、振り返りの場でもあるし、静岡の人に「こういう音楽をやってきた」と伝えられる良い機会だと思っています。

―最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

普段は集まることが難しい、凄腕のメンバーが集結します。演奏の精度や音楽の密度の高いステージになると思います。そんな特別な演奏を地元・静岡で届けられるのが本当にうれしいです。お会いできるのを楽しみにしています。

学生時代にサインをもらった渡辺貞夫さんや、ラジオで夢中になって聴いた向井滋春さん。憧れの人たちと音楽のお仕事でつながった不思議なご縁を、しみじみと、でもうれしそうに語ってくれました。その歩みと重ねてきた“音”が今秋、静岡で鳴り響きます。どうぞ、お聴き逃しなく!



村田 陽一
(トロンボーン奏者/作編曲家/プロデューサー)
1963年静岡市生まれ。1980年、「全日本ユース吹奏楽団」の一員としてアメリカ、メキシコで演奏。1982年に大学進学、上京を機にジャズ等のポピュラー・ミュージックに転向。在学中より新宿および六本木PIT-INNを中心に数多くのセッションを重ねる一方、自身のバンドで活動を始める。その後、著名アーティストへの楽曲提供、編曲、サポート、音楽プロデュースなど幅広く活躍している。ソロ最新作は「TapestryⅡ」(2024年)


グランシップマガジンvol.42の読者アンケートプレゼントは村田陽一さんのサイン入り色紙です。エントリーはこちらから。

村田陽一ビッグバンド
11/15(土)16:30~
中ホール・大地
一般6,000円 こども・学生1,000円

〈出演〉
村田陽一(リーダー・トロンボーン・作編曲)
サックス:吉田治、鈴木圭、小池修、竹野昌邦、山本拓夫
トランペット:西村浩二、奥村晶、佐瀬悠輔、二井田ひとみ
トロンボーン:東條あづさ、山城純子
ピアノ:松本圭司
ギター:養父貴
ベース:納浩一
ドラム:渡嘉敷祐一
パーカッション:岡部洋一

 

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