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第1期グランシップ登録アーティスト 各グループの代表メンバーが集合!3年間を振り返る座談会の様子をフルバージョンで掲載!

2022年度から、第1期グランシップ登録アーティストとして、静岡県内の学校に生演奏の楽しさを伝えてきた皆さん。
4つのグループの代表者が集まり、3年間の活動を通して感じたことを語り合いました。
グランシップ広報誌「GRANSHIP」に掲載中の座談会を、フルバージョンで掲載します。

【座談会参加メンバー】

写真左から
 古川春美さん(ALBOSトリオ/パーカッション)
 金原麻美さん(ミナトニカ/ピアノ)
 村上夢子さん(TrioWINGS/ピアノ)
 田中亜希子さん(Duologue/ピアノ)


―グランシップ登録アーティストに応募したきっかけは?

田中 難しいという印象を持たれることの多いクラシック音楽ですが、その魅力をわかりやすい形で多くの人に伝えたい、知らない曲でもよい曲があることを知ってほしいと思っていました。そうした気持ちがフルートの大川さんと一致したので二人で挑戦することにしました。

村上
 知り合いの先生がいる地元の小学校で演奏することはありましたが、そうした機会を個人で作るとなると難しいものがありました。子どもたちへ音楽を届ける経験をもっと積みたいと思っていたところに登録アーティストの募集を知り申し込みました。

金原
 以前から3人でライブ活動を行っていましたが、子どもと触れ合う機会は少なかったので、新しいことにチャレンジしたいと思い応募しました。

古川 学生時代に学校公演に来たアーティストの影響を受けて音楽の道を志したこともあり、自分も子どもたちが音楽を好きになるきっかけを作りたいと思っていました。他のメンバーも静岡に根付いた活動をしたいと考えていたので申し込みました。

―グループは違っても、研修や公演などで3年に渡り、活動を共にしてきた皆さん。それぞれのグループの印象はいかがですか。

古川 ピアノとフルートのDuologueは、グループ名の通り「対話」を大事にしていることがプログラムや二人の様子から伝わってきます。子どもたちにとても丁寧に関わっていると感じます。

田中 
ピアノと金管楽器のTrioWINGSはとても華やか。複数のサックスを使い分け、王道のクラシックを豊かな響きで演奏する、音で説得するタイプのグループですね。



村上 編曲も自分たちで行うミナトニカは、オリジナリティが魅力。ヴァイオリン・サックス・ピアノのそれぞれの楽器の良さが伝わってくる演奏です。3人の人間的な個性も面白く、ステージはとてもエネルギッシュ!

金原
 ALBOSトリオは、マリンバ、ピアノ、パーカッションというユニークな構成で、高い演奏技術を持っています。搬入が大変そうですが(笑)、たくさんの楽器が登場するので、子どもたちにとっては視覚的な魅力もあるのでは。

―学校でのコンサートで印象的だった出来事は?

古川 コロナ禍では子どもたちとの距離を取らなければならず、マスクで表情がわからなかったため、物理的・心理的距離を縮めるのが難しかったです。コロナ禍が終わり、子どもたち全員の顔がわかる状態で演奏ができた時、一曲ごとに表情が変わるのが印象的で、音楽を届ける活動が実を結んだと感じられる瞬間でした。また、海が近い学校で「ふるさと」と「海」を演奏した時は、実際に見た海の景色にインスピレーションを受けて、パーカッションソロで情景を表現しました。自分たちが住む海辺の町の良さを感じてもらえたのではないでしょうか。

田中
 基本的にピアノは子どもたちがいる方を向いて演奏することはないので、子どもたちの様子を気配で察するのですが、すっと集中する瞬間がきた時は「今、音楽の中に入ってくれている」と感じます。また、特別支援学校での演奏後、一人の女の子が時間をかけて声を絞り出すように「素晴らしかった」と感想を伝えてくれました。普段は口数が少ない子だったようですが、それでも他の生徒の前で発言してくれたことに音楽の力を感じました。



金原
 視覚特別支援学校で、その時に着ていた衣装のドレスに触れて、「どういう素材でできているの」と尋ねる女の子がいました。子どもたちは環境もすべて含めて音楽を味わっていて、いつもとは違う空間だと感じているということを知りました。

村上
 私たちのグループは山間地の学校へ行くことが多かったのですが、特にサックスは子どもたちにとって珍しいようで、後で先生から、『サックスをやってみたい』と言っていた子がいたと聞いて、音楽に興味を持つ種まきができたと実感しました。

金原
 学校と打ち合わせをしてプログラムを作るのですが、学校の要望と自分たちが子どもたちに体験してほしいテーマとのすり合わせが難しかったです。

古川
 選曲は毎回悩みますね。演奏家でしかできないことを提供したいと考えています。

金原
 ポップスなどイベント的な楽しさを期待されることも多いのですが、体を動かすなど一緒に参加できる曲を用意します、と提案をさせてもらったこともありました。



田中
 どのようにして子どもたちの集中力を持続させるのかも大切ですね。

古川
 子どもたちが知らない曲を演奏する時、「今から演奏するのはTVでは滅多に流れない曲です。」と伝えたら、自然に手拍子が始まり最後までしっかり聴いてもらえました。聴く機会のない曲ほど子どもたちに聴いてもらいたいと思っています。



―登録アーティストとしての3年間の活動はどのようなものでしたか?

田中 研修では毎回「何を伝えたいのか」ということが繰り返し問われました。それを考え続けることは、自分と音楽の関係を振り返る時間になりました。子どもたちに音楽を伝えるには、自分たちがその曲を深く理解する必要があります。一つの曲を様々な角度から、どのように見せるのかを追求することは、自分たちの演奏会のプログラム構成を考えるときにも活かされています。

金原
 「演奏を聴いた後、子どもたちがこんな風になるといいな」という目標をもってプログラムを作ることは、聴く側と演奏家の双方に良い影響があることを知りました。最初は、時間やトークなど演奏以外のことに気を取られがちでしたが、次第にペースもつかめて、メンバー間の役割分担もでき、グループとしてさらにまとまりが出たと感じています。

古川 価値観が違う3人が集まったグループですが、学校での演奏活動や研修を通して、子どもたちにどのような時間を過ごしてもらいたいのか、演奏を通じて聴き手である子どもたちとこんな風になれたらいいよね、というグループで目指す形が見えてきました。

村上
 音楽が一体誰のためのものなのか、音楽だからできることを問い続けた3年間でした。子どもたちへの活動を通して自分の子ども時代を振り返り、音楽は励ましてくれたり、力を与えてくれる存在だったことを思い出しました。また、自分の経験を子どもたちに伝える責任も感じ、演奏活動を続けていく上で貴重な時間になりました。  



子どもたちの目の前で演奏し、ダイレクトにその反応を感じられる経験は、登録アーティストの皆さんに演奏家としての新しい気付きをもたらしたようです。2月の「羽ばたき卒業コンサート」、そして静岡でのこれからの活躍にもぜひご注目ください。

 

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