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「坂東祐大&文月悠光 音楽と詩と声の現場2024」坂東祐大さんスペシャルインタビュー

2024年3月20日(水・祝)開催! 「坂東祐大&文月悠光 音楽と詩と声の現場2024」 坂東祐大さんスペシャルインタビュー

地上波ではあり得ない、すごく攻めた表現になると思います。 
坂東祐大(作曲家・音楽家)




オーケストラや室内楽、人気ドラマや映画の音楽、米津玄師さんの共同編曲、さらにはニュース番組のテーマソングなど、あらゆるフィールドからのオファーが後を絶たない、注目の作曲家・坂東祐大さん。尖っているのに心地よく、新風を吹き込むような音遣い。
唯一無二の作品を生みだす根源や来年3月に開催される公演への思いなどを聞きました。

 淡い日差しが入り込む取材部屋はアートな雰囲気で、坂東さんと溶け合っていました。静岡との接点を尋ねると、「小学生の時にヤマハの工場へピアノを選びに行きましたよ」とにっこり。メイドイン静岡のピアノで育った少年時代のお話から始まりました。

―お母さまのすすめで、ピアノを始めたそうですね。
 はい。母は音大短大部の出身で、中学校の音楽講師や町のピアノの先生をしていましたが、僕にはスパルタ教育で…。練習がとにかく嫌でしたね。

―ピアノの演奏家ではなく、作曲家を目指したのはなぜですか?
 小学4年生の頃、当時習っていたピアノの先生から、作曲へ転向することを勧められました。要は、ピアノは“人口”が多くてプロになるのは厳しいという現実を突きつけられて。親も盛り上がってしまい、「ノー」と言えず今に至っています(笑)。

―ご自身の意思で始めたわけではないようですが、作り手としての面白さを感じたから、続けているのだと思いますが?
 自分が作った作品を、人に演奏してもらうという行為が面白いと思いましたね。もともと建築家や映画監督になりたいと思っていて、自分の考えたビジョンをいろんな人にリアライゼーションしてもらい、表現として確立していくという点で、作曲家もそれに近いのかなって。特に、公演をどう作り上げるか、演奏家と一緒に考えて作ることに面白さを感じています。
 以前、チェロ奏者の山澤慧さんに、僕の曲はアプローチの仕方がすごく難しいと言われたことがありました。どうやら、楽譜に書いていない表現の領域のツボが、他の作曲家とは違うようで(笑)。演出的な部分になるかもしれないですが、そこも面白い作業です。

―楽曲を表現する演奏家選びはかなり重要ですね?
 とても大事です。作品を作る時も当て書きをして作ることが多いですね。



―来年3月20日の公演は、作曲家と詩人によるコラボレーションというユニークな企画ですね。
 それをお話しておきたかったんです。本来、詩人と作曲家ってもっと近しい関係性でしたよね。先日、詩人の谷川俊太郎さんにお会いする機会があって、作曲家の武満徹さんや湯浅譲二さんのお話をいろいろ伺ったのですが、本当に親しい付き合いだったんだと感じて、僕たち世代もそういうコミュニティをもっと築くべきだと思いました。
 静岡のお客さまは「しずおか連詩の会」の影響もあってリテラシーが高いという印象です。そういう場所で現代音楽と現代詩の公演ができることがとても嬉しいです。

―今回の公演は、以前取り組まれた言葉と音楽のインスタレーションがベースのようですが、なぜ、そのようなアイデアに至ったのでしょう?
 トーキョーアーツアンドスペースさんから作品展示のお話をいただいて、アイデアを探している時に「言葉」で面白いことができないかと思いついたんです。そんな時、偶然詩人の文月悠光さんと知り合って「やってみよう」って。
 僕の現代音楽の根源は、「ずれ」や毒っ気のある表現です。「これが正しいとされているけれども、本当にそうだろうか?」みたいなことをいろいろなレベルで指すこと。
 構想期間中はコロナ禍で、おかしなことがたくさん起こっていました。それを作品にしようと考えていたら、文月さんも日記にしていて。例えば、「2020年4月、政府がお肉券とお魚券を配る」「イソジンでうがいをするとコロナに感染しない」など。普通に考えたら、これを作品にすることすらおかしなことなのに、大真面目にやっている姿も作品にしよう、と。これならコンセプトにできるなって思いました。

―確かに毒が盛られています(笑)。文月さんの日記はどのように表現されましたか?
 複数の日記の文章を6人の方に朗読してもらいました。「何月」「何日」「誰が」「~であった」みたいに、それぞれのテキストから言葉を切り刻んで全然違う文脈で提示してたら、「全然」「突然」「お肉券」「走りだす」などという別の世界観を映し出す作品になって、とても面白いインスタレーションができました。

―今回坂東さんと文月さんのセッションはありますか?
 同時発信もあるかなと思っています。僕が書いた音楽のパートに文月さんが詩を乗せてくれるとか。その逆もあるかもしれない。どちらが先というよりも、完全に対等でいるほうが面白いかなと思っているんですよ。「詩と音楽」というと、すぐ「歌」を連想しちゃいますよね。それでは面白くないと思っていて、いろんな可能性があるんだけど、単なる「歌」にならないところに、やる意味があるんじゃないかと思っています。
 また、音楽と詩という抽象的な表現同士を掛け算して魅力的なものを作れたら、面白いだろうと思っています。

―今思い描いている構想を、少しだけ教えていただけますか?
 尖った表現となることに、間違いないと思います。最近よく考えている、「1日のスピードが以前にも増して早くなっていること」に対して抗ってみようとする作品や、「これっておかしくない?」みたいなこともたくさん提示したいと思っています。 
 演奏予定の『言い訳の方法』という作品は、政治家がむちゃくちゃなレトリックで発言することを音楽に変換しようというものですが、そういう言葉と音楽の関係性を様々なバリエーションで見せられたら面白いと思います。

―何かを気付かせたり、問い掛けをもたらす公演になりそうですね。
 少なくとも、アートとしてやるという文脈では、とても大事にしていることです。単に演奏が良かった、感動した、ありがとうというコンサートは沢山あると思うんですが、現代音楽の作曲家のコンサートとして公演を催すとしたら、それは違うと、常々思っています。

―静岡でこのようなイベントはすごく珍しいと思います。ぜひ多くの方に体感してほしいですね。
 はい。よく、現代音楽では、「これが最先端の表現」と言われますが、何が最先端である、なんて定義できる時代じゃない。「アクチュアルな2024年に、音楽でこんなことができるんだ!」という可能性を見せられたらと思っています。地上波ではあり得ない、すごく攻めた表現になると思いますので、日常に刺激を求めている方は、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。

 坂東さんといえば、米津玄師さんとの共同編曲でも有名です。お二人は同世代ということもあり、聴いてきた音楽が近いようで、何かしらカルチャー要素を含んだ曲を好むことで気が合うそうです。お話を聞く中で感じたのは、豊富な知識と発想力。泉のごとく湧いてくるアイデアに、来年3月の公演が楽しみになりました!



坂東 祐大 Yuta Bandoh  作曲家/音楽家
1991年生まれ。刺激と知覚の可能性や脱構築などをテーマに、幅広い創作活動を行う。作品はオーケストラ、室内楽から立体音響を駆使したサウンドデザイン、シアター・パフォーマンスなど多岐に渡る。東京藝術大学作曲科及び同大学院修了。第25回芥川作曲賞受賞(2015年)。2022年1月には初の作品集となる「TRANCE/花火」がDENONレーベルよりリリース。2016年、Ensemble FOVEを創立。代表として気鋭のメンバーと共にジャンルの枠を拡張する、様々な新しいアートプロジェクトを多方面に展開。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(坂元裕二 脚本)、映画『竜とそばかすの姫』(細田守監督、音楽:岩崎太整、Ludvig Forssellと共に)、米津玄師との共同編曲、宇多田ヒカルの編曲及び指揮、嵐 「カイト」オーケストラアレンジメント等。



「坂東祐大&文月悠光 音楽と詩と声の現場2024」
2024年3月20日(水・祝) 17:00開演
全席指定/一般5,000円 こども・学生1,000円

【出演】
坂東祐大(作曲家/音楽家)
文月悠光(詩人)
多久潤一朗(フルート)
秋田勇魚(ギター)
石上真由子(ヴァイオリン)
矢部華恵(朗読)

 

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