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10/29(土)「鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト レクイエム」スペシャルインタビュー

鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト 「レクイエム」 スペシャルインタビュー

自分の音楽に自分の言葉が宿る。それが音楽家のすべてだと思う。 鈴木 優人

指揮者、作曲家、ピアニスト、オルガニスト、チェンバリスト、演出家と多彩な顔を持つ鈴木優人さん。
特に昨今は指揮者として才華爛発。10月29日は、自身が補筆したモーツァルトの「レクイエム」を初めて静岡の地に響かせます。聴きどころや豊かな音楽人生を語ってくれました。

 東京・新国立劇場でのオペラの稽古の合間に、快くインタビューに答えてくれました。実は静岡に縁が深いそうで、「静岡に悪い人はいない」とお褒めいただきました!嬉しくて、静岡のお話から始まりました。

―何度か静岡で演奏をされていますが、静岡のお客さまの印象は?
 音楽好きの方が多い印象がありますね。静岡音楽館AOIではオルガンを弾きましたし、グランシップでは「マタイ受難曲」や「メサイア」を演奏しましたが、すごく熱心に聴いてくださいました。

―ご両親が音楽家で音楽は常に身近だったと思いますが、どのようなきっかけで音楽家を目指したのですか?
 両親が、「音楽家になれ」と強制することはなく、自然と音楽を呼吸していたというか、そういう印象。でも、いつから音楽家になったのかというのは資格を取るわけではないし、なかなか難しくて。いろいろ活動しているうちに音楽人生を歩んだ感じですね。
 音楽につながるところで様々なジャンルの人と話すのが好きで、その道で活躍されている方にはすごくインスピレーションを受けています。もはや、音楽は人生の一部です。

―お父様(鈴木雅明氏)との音楽の思い出は?
 父は、特にバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)というバロック・オーケストラと合唱団を率いてカンタータ全集の完結に向け、突き進んでいたので、BCJを中心に家族が動いていましたね。父との音楽といえば、小さい頃に連弾していて同じところを2回間違えて怒られたり、即興演奏で遊んでくれたり。自然に音楽と触れ合えたのは嬉しかったけれど、ピアノの練習は嫌いでした。人が聴いていると弾く気になるので、実はずっとドアを開けて練習していたんです。人のために弾きたいという気持ちが強かったのですが、親も仕事をしていたから時々、「うるさーい」って(笑)。
 コンサートにもよく連れていってもらいました。小さい頃は最前列で聴くのが大好きで、指揮者がオーケストラを立たせる時、思わず自分も立ちそうになって(笑)。それぐらい最前列は臨場感がありましたね。

 ―指揮者、作曲家、ピアニストなど幅広く活躍されていますが、どのようにして活動が広がりましたか?
 チェンバロを弾く仕事、オルガンを弾く仕事…、その時々で呼び名が変わるだけで、あれもこれもと広げたつもりはなかったですね。
 2009年に新国立劇場で、「ポッペアの戴冠」というコンサート形式のオペラを演出しましたが、この時も演出家になろうと思ったわけではなくて、コンサート形式のオペラをそのままやってもつまらないかも、と思ったから。お客さんに分かりやすく、センスの良い演出にしたくて、演出家としても参加することにしたんです。好きなことをやっていく中で、好きな人たちと巡り合いながら広がった面もあると思います。この長い肩書きに惑わされないでくださいね。

―最も好きな活動は?
 指揮の仕事は多くの人と関われることが楽しい。でも、それが長く続くと音楽ではなく、人の顔を見ているような感覚になって…。そういう時に一人でチェンバロやピアノ、オルガンを弾くと、何かを取り戻したような気持ちになります。その変化が大事だと思っています。

―昨今日本の若手演奏家が国内外から高く評価されています。今後、若手演奏家にどのようなことを期待しますか?
 新しいことにどんどん挑戦してほしいですね。それと、言い方がちょっと難しいけれど、自分の好きな音楽を続けてさえいれば、必ずしもスターになる必要がないのがクラシックの良いところだと思うので、若い人は焦らなくていいと思います。活躍している音楽家は、自分の音楽に自分の言葉が宿ってる。それがすべてだと思います。

―「レクイエム」公演のお話に入りますね。まずは「レクイエム」にまつわる思い出を聞かせてください。
 10年ほど前に、BCJが「レクイエム」を演奏することになり、補筆校訂版を作りました。「レクイエム」は、未完のままモーツァルトが亡くなったので、モーツァルトが書いた部分は触れないようにして、すでに補筆されたジュースマイヤー版、アイブラー版のいいとこ取りをしようと。主に自分が演奏した時に気になっていたところを改善して、現実的な版を作ろうと考えたんです。それプラス、「アーメン・フーガ」を補筆したのでホテルに缶詰でハードな日々でした。「アーメン・フーガ」は、「レクイエム」を代表する「ラクリモーザ(涙の日)」に続く1分未満の曲で、この曲を入れたことが評価されたのはとても嬉しかった。また、「レクイエム」は、曲も素晴らしいけど楽器編成も変わっていて、バセットホルンというクラリネットを曲げたような古楽器が出てくるのですが、これが実にいい味。普通のオーケストラにあるホルンやオーボエはなくて、バセットホルンが木管楽器を代表するという珍しい編成なんです。

―古楽器で演奏する魅力とは?
 一体感ですね。ポップスのコンサートも同じだと思いますが、ある歌手がその言葉や音楽を歌うからこそ生まれる一体感があって、みんなの中に入ってくる。モダン楽器は良くも悪くも汎用性が高くて、今までの曲をすべて弾けるようにしようと作られています。しかしモーツァルトの時代には、モーツァルト以前までの音楽しかなかったわけだから、その時代の楽器で弾くことで、当時の演奏家が抱えていた制約や葛藤を体験できるし、その中で「この音を出す」っていうことに意味が生まれる。高い音があったとして、モダン楽器なら簡単に鳴らすことができるけれど、作曲家はそれを「大変な音」として書いているんですね。あえてポップスに例えると、すごく辛そうな高い音を出している歌手がいて、でもそれがやっぱりその曲の意味でもある。そこにコロラトゥーラのオペラ歌手が出てきて、簡単に歌ってしまったら全然伝わらなくなってしまうかもしれませんよね。逆に古楽器の方が表現しやすい音型もあるし、できるなら、当時の楽器で演奏するほうが絶対に楽しいと思いますね。

―公演が待ち遠しくなりました!最後に、グランシップマガジン愛読者の方にメッセージをお願いします。
 予習しなくても大丈夫ですが、事前にCDを聴いていただけたら、より楽しめると思います。サブスクでも聴けますよ。繰り返し聴くと、「こういう感じになるんだ」と思っていただけるんじゃないかな。勉強が好きな方は、曲の背景を知っておくと良いですし、10月15日には事前講座を開きますので、ぜひ来てくださいね!

(本誌未公開カット)

 取材後、過去のグランシップマガジンを読んでいた鈴木さんが手を止めたページが。見ると、「グランシップトレインフェスタ」のページでした。実は各駅停車で福岡まで行ったことがあるという「乗り鉄」だったそう。来年はぜひトレインフェスタへ!

鈴木優人  Masato Suzuki  指揮者、作曲家、ピアノ、チェンバロ、オルガン奏者

1981年オランダ生まれ。東京藝術大学及び同大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。第18回齋藤秀雄メモリアル基金賞。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)首席指揮者、読売日本交響楽団指揮者/クリエイティヴ・パートナー。指揮者としてオーケストラ・アンサンブル金沢、NHK交響楽団等と共演。2017、20年に鈴木優人プロデュース・BCJオペラシリーズを制作、上演。テレビ朝日「題名のない音楽会」にも度々出演。調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー、舞台演出、企画プロデュース、作曲など活動に垣根はなく、各方面から期待が寄せられている。九州大学客員教授。

撮影協力:株式会社グリーンハウス(本社:東京都新宿区)
※バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)は、今年4月に創業75周年を迎えたグリーンハウスグループとパートナーシップを締結しました。


※下記の公演は開催終了しました。
鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト レクイエム
10/29(土) 15:00~ ■中ホール・大地 ■S席7,500円 A席6,500円 こども・学生1,000円

[事前レクチャー] 鈴木優人が語る、モーツァルト「レクイエム」(演奏付)
10/15(土) 14:00~ ■地下・リハーサル室 ■一般1,000円 こども・学生500円(事前申込制)

※詳しい情報は鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト レクイエムイベントページ(随時更新)でご確認ください

このページは、グランシップマガジンvol.30(6/15発行号)スペシャルインタビューより掲載しました

 

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