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7/22(土)「東京グランド・ソロイスツ」 三浦一馬[バンドネオン]スペシャルインタビュー

7/22(土)「東京グランド・ソロイスツ」 三浦一馬スペシャルインタビュー

私が提案する“現代のピアソラ”を。
三浦 一馬[バンドネオン]


音階順に並んでいないボタンが左右に計71個あり、蛇腹を伸縮させて音を出す楽器、バンドネオン。
奏者である三浦一馬さんは、豊富なアイデアで編曲やオーケストレーションでも活躍し、人々を虜にする。
2021年に放送されたNHK大河ドラマ「青天を衝け」の本編後に放送された『大河紀行』の音楽を演奏したことでも注目を集めました。
三浦さんご自身のこと、2017年に満を持して結成した「東京グランド・ソロイスツ」の魅力に迫ります。

 春が訪れたような陽気の2月某日・東京。取材場所に三浦さんが現れると、一瞬にして洗練された雰囲気に。恩師ネストル・マルコーニ氏から譲り受けたという銘器「Alfred Arnold」をさらりと奏でてくれました。その音色から、2021年2月に開催したコンサートの記憶が蘇ってきました。

―長泉町でのグランシップ出前公演、サックスの上野耕平さん、ピアノの山中惇史さんとのトリオコンサートはとても盛り上がりました!二度もアンコールに応えてくれましたね。
 盛り上がりましたね!コンサートが進むにつれて、客席も沸いてきているんじゃない?って感じていました。静岡のお客さんは温かいし、盛り上がり時を分かっていますよね。アンコールが1回で終わる時もありますが、あの日はお客さんが本当に喜んでくれたから、それにお応えしたくて。

―バンドネオンを始めたのは10歳の時だそうですね?演奏家や習っている人が少なく、なかなか出合わない楽器だと思いますが?
 テレビの『N響アワー』を見て偶然バンドネオンと出合いました。音も見た目も大人っぽくてかっこいい。憧れていた大人の世界が初めて目の前で具現化されたのが、バンドネオンであり、ピアソラの音楽でした。テレビを見てから半年で小松亮太先生のインストアライブに行き、習い始めることになります。

―ボタン操作や蛇腹の押し引きなど、難しい楽器を少年時代から続けてこられました。それほど魅力を感じていたからですよね?
 もちろん。本当に憧れていた楽器だったから、手に入れて、憧れの曲を弾けるだけで楽しい。そこですよ、モチベーションは。弾き始めてから3、4年経った頃が、技術的にも、理論的にも、いろんな裏付けをしなければならず、一番辛い時期だったかもしれません。それでも、バンドネオンが好きという気持ちが勝っていたからやめなかったし、今日につながっているのだと思います。
 元々はドイツの携帯式パイプオルガンだったというバンドネオンは、楽器でありながら、人間味があって素朴さもあります。弾いていて、「ここ、もうちょっと何とかなったよね」と楽器として完成し切っていないと思うことも多々ありますが(笑)、そこがまた憎めない。時にじゃじゃ馬で、人の本能に訴えかけてくる何かを持っているような気がします。蛇腹の伸び縮みは呼吸と連動するし、音に気持ちが乗りやすい。やっぱり生きている感じがします。



―世界的な演奏家ネストル・マルコーニ氏に師事されていますが、どのようなきっかけで?

 直談判です。マルコーニ先生が、「別府アルゲリッチ音楽祭」に出演されることを知って九州まで行きました。そこで初めてお会いして、「ブエノスアイレスに来るんだったら、教えてあげるよ」と言っていただけたんです。実は、この裏にはいろいろドタバタ劇があって。話すと長くなりますが(笑)、国際音楽祭だから、とにかくセキュリティが厳しくて、どこへ行っても警備員がいて全然会えなかった。でも、たまたま仲良くなった関係者の方から、ある晩、電話がきて、「今、お寿司屋さんにマルコーニさんがいるよ」と教えてもらい、慌てて楽器を持って駆け付けたんです。憧れ続けた人を目の前に、お寿司屋さんで演奏することになって、その時ばかりは足がガクガク震えて弾けたもんじゃなかったですけど。翌日、改めてホテルにお邪魔して、先生は本番前にもかかわらず、レッスンしてくださって、さらに楽譜までいただいて。それが高校一年生の時のことです。

―恩師マルコーニ氏からどんな影響を受けましたか?
 小学生の時に聴いた第一印象から、とてもマルチな才能を感じていました。演奏がピカイチなことは言うまでもありませんが、バンドネオンでメロディーを歌い込み、曲に命を吹き込むような演奏。それは随分真似ました。作曲、編曲、楽団の指揮、そして、プロデュースをしていたことにも影響を受けています。そのセンスや演奏は都会的でクールで洗練されていて、こうなりたいと憧れました。
 楽器の両側に着いているベルトをずっと締めつけるようにして弾いていましたが、「そのベルトゆるめてごらん」と先生に言われて。表現力への意識が変わりましたね。

―レパートリーの中核を担うピアソラは、やはり特別な存在ですか?
 特別過ぎます!一生かけても追い越せる自信がない。私もいろいろな活動をしていますが、そこで何があってもピアソラの音楽が、原点に立ち返らせてくれる。北極星のように、ずっと自分の中の「軸」となる存在で、いろんなことをやってもその星を見れば、帰って来られる目印でもあります。「そんなに聴いていて飽きないの?」とよく聞かれますが、何度聴いても飽きない!コンサートで存分にピアソラを弾いても、車で爆音でピアソラですから(笑)。

―ピアソラがキンテート(五重奏)にこだわったように、三浦さんもキンテートでも活動され、さらにキンテートに弦楽アンサンブルを併せた「東京グランド・ソロイスツ」(以下、TGS)を立ち上げました。なぜ、この編成に?
 いろいろな編成で活動しながら、ピアソラの醍醐味であるキンテートにオーケストラのダイナミックさを取り入れた編成でピアソラをやりたくて。オーケストラの迫力とキンテートのフットワークの軽さのいいとこ取りですね。

―TGSの魅力とは?
 ピアソラの音楽を、現代に即したものにアップデートさせるという大きなテーマがありまして、オリジナルを尊重しているキンテートとは違うピアソラを楽しんでいただけると思います。TGSは今の人々に伝えたい。私が提案する“現代のピアソラ”がどんな音楽か、聴いてもらえたらうれしいですね。

―7月の公演は、どのようなプログラムになりそうですか?
 初めましての方にもお楽しみいただけるセットリストを考えています。一番自信をもってお届けできる曲を演奏する予定です。

―今から公演が楽しみです。
 ありがとうございます。TGSはスタンダードからビヨンド的な新しい発見を伴う曲まで、さらにモダンなものにブラッシュアップしていきますので、まずは一度聴いてもらえたらと思います。

―最後に、マガジンを愛読されている皆様にメッセージをお願いします。
 やっぱりこの質問になるんですね(笑)。難しい話はないので、心を解放して楽しんでいただければ嬉しいです。我々奏者は、みなさんに喜んでもらえたらますますノルんです。拍手や盛り上がりが大好物なので、ぜひ2割増しで表現してほしいです。



 ドライブ好きな三浦さん。子どもの頃はラジオペンチやドライバーキットが宝物だったというメカ好きな一面も。最近は音楽を創る工程にも似ていると仰る料理も好きで、おうちビストロを楽しんでいるようです。7月の公演では、プレトークも予定。どんなお話を聞けるのかも楽しみです!


東京グランド・ソロイスツ
7/22(土) 14:00~
■中ホール・大地 ■5,500円 こども・学生1,000円


Kazuma Miura
三浦一馬 バンドネオン奏者
2006年、別府アルゲリッチ音楽祭にて、バンドネオン界の最高峰ネストル・マルコーニと出会い、自作CDの売上を渡航費に充ててアルゼンチンに渡り、現在に至るまで氏に師事。2008年国際ピアソラ・コンクールで日本人初、史上最年少で準優勝。2014年度出光音楽賞を受賞。2017年、室内オーケストラ「東京グランド・ソロイスツ」を結成。若手実力派バンドネオン奏者として注目を集めている。


『GRANSHIP』vol.33のアンケートにお答えいただいた方の中から抽選で、7/22(土)東京グランド・ソロイスツ 三浦一馬〔バンドネオン〕に登場する三浦一馬さんサイン入りCDを1名様にプレゼントいたします。
ブエノスアイレス午前零時 ピアソラ生誕100周年記念

下記応募フォームの必要事項、アンケートのお答えをご記入の上、送信してください。
締め切りは2023年5月15日です。



このページは、グランシップマガジンvol.33(3/15発行号)スペシャルインタビューより掲載しました

 

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